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坂口孝則の大企業脱藩日記①

January 19, 2017

企業で働いていたとき、単純な事実に気づいた。社員は優秀であれば、他社員よりも最大1.5倍ほどの給与はもらえる。日系企業の場合で、外資系はもっと違うだろう。しかし、能力差は10から100倍はある。なぜかというと、能力の低い社員との関係上、せいぜい1.5倍にしかならない。これは不満をもっても仕方がない。苦情をいうくらいなら、独立して辞めるしかない。

 

大企業を辞めるちょっと前に、幻冬舎から出した「牛丼一杯の儲けは9円」が売れ、毎週のように20万円とか30万円が入ってきた。これこそが、比例的に収入化できる道だと思った。しかし、とはいえ、作家だけで生きていけるはずはない、と自己認識もしていた。とはいえ、どうしよう……。もやもやする期間が1年はあったと思う。すると、現在、「週末起業」で有名な藤井孝一先生にお会いする機会があった。当時の藤井先生は、現在にもまして天の上の存在で、有名人だった。藤井先生にお会いしたといっても、パーティー等で声をかけたわけではない。なんと私の本を読んで気に入ったとかで、わざわざオフィスに呼んでくれた。

 

藤井先生は「独立したほうがいい」といったあと、「でもね、まずは副業で会社年収分を稼げるようになってからだ」とおっしゃった。「それなら条件は合います」と述べると。「じゃあ、いいじゃないですか」といってくれた。

 

その他、さまざまなひととの出会いがあった。そして、考えた末に、株式会社アジルアソシエイツに入社することになった。取締役待遇だった。そして、元の自動車メーカーを辞めることになるのだが、最後だけは悪い思い出しかない(それ以外は、冷静に考えても、良い思い出しかない)。上司から有給はとってはいけない、といわれ、かつ何か気に入らなかったのだと思うけれども、お別れの飲み会もなかった。だから、有給を消化することなく、最終日まで働いた。ただ、最終日の2週間前からは、聞きつけた有志が毎日のように飲み会に誘ってくれた。最後の数日間は、社内PHSの電源を切ってしまったほどだった。

 

思い出深いのがF1の技術者だったIさんで、当時は他部門の調達・購買マネージャーだった。私の言葉を一つひとつ非常に熱心に聞いてくれ、アドバイスをくれた。涙が出た。何度かの食事と、社内にいるときも昼食にさそってくれ、さらにはプレゼントまでくれた。仕事の師でもあり、すべての著作に氏のエッセンスがある。具体的なノウハウではない。思考法だから、著作権もない。ただ、こういった無形財こそが財産だと知った。

 

ところで、これは批判ではなく、一般論だが、大企業から小企業に移ると落胆するのが、その雰囲気だ。大企業はなんだかんだで、多くのひとがいるし、空間的にも広い。それが、狭いオフィスになる。一般的には、このギャップで苦しむひとが多い。私は、その点では苦しまなかった。

 

ただ、実際に次の仕事をはじめると、まったく異なる心労が重なって、逃げ出したくなった。しかも、わずか数日で。

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